4G63オーバーホール

今回は若干チューニングっぽい変更を加えたのと、撮影しながら作業できたので、ネタ的には良いのではないかと思います。

ピストン

エボ9用Top

エボ9用Top

エボ9用Bottom

エボ9用Bottom

エボ9用Side

エボ9用Side

エボ2用Top

エボ2用Top

エボ2用Bottom

エボ2用Bottom

エボ2用Side

エボ2用Side

エボ2,3のピストンは再三棚落ちを経験したため、今回はエボ9のピストンを流用してみることにしました。別のページにも書いていますが、大抵の場合2ndランドが割れてしまいます。ただし、私の場合、ブーストを上げてショートサーキットを走行をしているので条件的には厳しく、純正のセッティングであれば容易に壊れるものではないことを付け加えておきます。
クーリングチャネルの追加など、エボ7から大きく変わったようですが、それ以降も細かな変更は続けられているようです。
大きな変更は次の通りです。
ちなみに、私の車のエンジンはエボ3ですが、圧縮を下げてブーストを上げるためエボ2のピストンを使用していました。なので比較写真もエボ2のピストンとなっています。

さて、流用にあたってはIN/EXTが逆転していますので、インテーク側のバルブリセスを拡大する必要があります。実は、最初の写真のエボ9用Sideでは既にバルブリセスが切ってあります。
また、先に述べたとおり、オイルジェットが変更されていますので、これもエボ7以降の物に交換します。 古いタイプはピストンの裏側にオイルをかけているだけですが、新しいタイプではノズルの長さが延長され、 向きもクーリングチャネルの穴にキッチリ合うように変更されています。
交換せずに、ノズルをまげて向きを調整することで代用することも出来るようです。
純正の圧縮比は8.8ですが、バルブリセスを切ってますので、若干低くなっていると思われます。(復旧作業優先のため、今回測定は省略した。)

コンロッド

evo3コンロッド

コンロッド

evo3コンロッド加工後

コンロッド加工後

エボ3純正のコンロッドです。コンロッドも最終型までにだいぶ変更されているようですが、比較的高価であるため今回は既存のものを加工して使用します。
こういった場合のお約束。というわけで、鏡面加工と重量あわせを行ってみました。
鋳造時の最中の合わせ目部分の段つきや、組み付け時のマークは削り落としました。 外周はディスクグラインダーで、内側や大端部はリューターで大雑把に削ったあとでサンドペーパーやゴムやすりで凸凹をならしていくと比較的作業性が良いです。
オリジナルが、約610g(メタル含まず)に対し、594gに仕上げました。 精度の高い秤が無かったので誤差は0.5g以下としました。
コンロッド小端部の厚み比較

コンロッド小端部厚み比較

コンロッドとコンロッドキャップをそれぞれ同じ重さになるように調整しました。 コンロッドは一本だけ4g程度軽いものがあり、よくよく見ると明らかに小端部の肉厚が違います。 加工の際のずれと思われますが、1mm近くずれており、当時の純正品の加工精度の低さに驚かされます。
しかし、組む時にばらつきが少なくなるように選んで組んだりはしていないのでしょうかねぇ。
まあ、その分マージンをとってあるのだろうと解釈し、すべて軽い方にあわせて削りました。
次にエンドキャップですが、これまた160g〜163gとバラバラ。こちらも軽い方に合わせます。
実際やってみると、リブのようなものが入っていたりして形が複雑で、かなり骨の折れる作業です。その割りに効果の程は定かではないので、お勧めできる作業ではないですね。私自身途中で気持ちが折れてしまい、面仕上げはそこそこで終了しました。
往復運動部分の軽量化は信頼性の向上には役立つと思ってはいますが、やはり体感はできなかったです。残念!
ピストンピンの圧入

ピストンピンの圧入

ピストンピン圧入の模様。この作業はプレスがないと厳しいです。
治具はあらかじめSSTもどきを作成。適当な厚みのパイプを見つければ、 金のこがあれば代用品は作れると思います。
圧入する際は少しバーナーで暖めてやるとスムーズに入ります。
コンロッドを再利用する場合は、小端部内側に傷などが付いていないか予め確認しておきましょう。 稀に抜き取り時にかじってしまい傷が付く場合があります。

シリンダーボーリング

ボーリング後のブロック

ボーリング後のブロック
クロスハッチが美しい

今回は限度値を割り込んでいたため0.5mmオーバーサイズにボーリングを行いました。
走行距離が少なくて大きな傷が無ければ、極端に減っていることは無いと思いますが、 10万キロ程度走るとピストンリングがあたるシリンダーの中央部分が減ってくるようです。
測定にはボアゲージやマイクロメーターが必要ですが、ホーニングするつもりであれば、 ボーリング屋でボーリングが必要かどうか測ってもらっても良いと思います。 整備書では0.25mm刻みでO/Sがありますが、現在入手できるのは0.5mm刻みだそうです。
ボーリング時のピストンクリアランスは30-40umを指定。ターボエンジンだと若干少なめであるが、 元々ブローバイの多いエンジンなので、多めに慣らしをやれば大丈夫だろうという判断から。 しかし、サーキット走行をすることや、鍛造ピストンに変更した事を配慮し、 基準値か若干大きめにしておくのが正解。

コンロッドベアリング(子メタル)

コンロッドベアリング

コンロッドベアリング

コンロッドのメタルは、裏側に0/1/2の識別マークがついている(油性塗料で印字)のですが、装着時に擦れたり、熱で消えてしまっている場合も多いです。また、クランクシャフトに識別色がマーキングされていますが、こちらも消えている場合が多いです。特に、識別マークとして「無印」も用いているため、消えているのか無印なのか判断できないのがいただけないですね。
また、クランク側の磨耗も0ではないわけで、一応実測してみた方がベターです。 確認したところ、2009/08/12現在入手可能なパーツは3種類(あるいはこれらの同等品)で、P/NはそれぞれMD326359,MD326360,MD326361で50umづつ厚くなっています。単体の厚みは後述の方法を用いれば不要なため、確認していません。
さて、では測定の方法ですが、私の場合は1番(MD326360)をまず入手します。これで組んでみて、全ての気筒の必要なメタルを選択して発注します。運がよければ、測定用に入手した1番もあう場所があるので使ってしまえばよいわけです。
測定には整備書にもあるとおり、プラスチゲージ法をお勧めします。読み取り誤差はある程度発生しますが、安価かつ初心者でも扱いが容易で、比較的精度良く測定できます。また、点でなく線で測れるので、偏磨耗も見つけやすいです。そして、なんといっても使い捨てなので安いです。
注意点としては、つぶれ方が小さいと精度が下がるので、測定範囲内でより太いものを選択した方が良いでしょう。

クランクシャフトベアリング(親メタル)

まず、取り外す前に現状の当たりと磨耗具合をプラスチゲージで確認しておきます。綺麗にあたりが出ており、クリアランスも基準値を割っていなければ、むやみに交換しない方がお勧めです。
当たり面が、比較的大きいためと思いますが、コンロッドベアリングに比べるとダメージは少ないようです。恐らく、適切にオイル管理されていたエンジンであれば、10万km走っても基準を割るか割らないかだと思います。価格的にもクランクベアリングは価格が2k円程度しますし、数も5組あるので1万円以上の出費になります。
当たり面は綺麗でしたが、限度値をわずかに割っているものがあったので今回は交換することにしました。
クランクベアリングは、5種類あり、クランクシャフトとエンジンブロックの刻印によって、選択すべき厚みがわかるようになっていますが、例によってクランクシャフトのマーキングが消えている場合があります。 また、クランクベアリングはマークが無いものも存在するようです。(実際にマークが無いものが来たことがあります。)
また、整備書ですと、ベアリングには識別色が塗ってあると記載されていますが、ベアリングの裏側に数字による識別マークが印字されています。経験的には、この数字は読み取れることが多いようです。
実測による場合は、コンロッドベアリングと同様に、どれか一種類入手してクリアランスを計測するのが良いでしょう。3番目(真ん中)のメタルはスラスト方向のメタルも兼ねるので形状が異なりますが、計測にあたってはスラストベアリングの無いタイプで代用できます。
それぞれの厚みの差は調査中ですが、コンロッドのベアリング(50um)よりは細かな設定になっているようです。
今回は、基準値を若干割り込んでいたので、全部交換することにしました。また、当初組んであったベアリングはサイズが3,3,1,2,3でしたが、3,3,1,3,3に変更してもオイルクリアランスが不足することは無かったので、変更してしまいました。

サイレントシャフト

サイレントシャフトベアリング

サイレントシャフトベアリング

ベアリング交換

ベアリング交換

4G63にはサイレントシャフトが採用されています。サイレントシャフトにも一応メタルがあります。「一応」というのはこのメタルは分割式でなく、円筒形のメタルに差し込んであるだけの構造なんですね。当然、クリアランスはかなり大きいし、厚みの設定もありません(1mm O/Sはある模様)。こんなんで大丈夫なのか心配になりますが、あまり負荷の掛かる部分ではないので、十分ということなのでしょう。
ダメージが無ければ、交換する必要のない部分と思いますが、確認してみるととんでもないことに・・・
何でこんなになっちゃったのか気になるところではありますが、とりあえずメタルを交換することにします。
整備書ではSSTを使用して引き抜いていますが、ベアリングは押し込んでしまえば抜けるので、傾かないように注意しながら叩き込んでいきます。ドライバーなどでも出来るそうですが、案外硬くはまり込んでいる場合もあるので写真のような真鍮の棒とかがあるとブロック側や新しいメタルを傷つけず、作業性が良いです。
この真鍮の棒はいろいろと重宝するので、プライベーターの方は持っておくと良いですよ。
挿入時はオイルライン用の穴の向きに注意して組み込みます。

フリクションロスの低減のためサイレントシャフトは取り外す方法もあります。ただし、シャフトのみ取り外してしまうと、振動で各部のボルトが緩んだりして不具合を起こすそうですので今回は見合わせました。
うまくいっている例もあるようなので、恐らく、ピストンやコンロッドを十分軽量化し、振動を減らしたうえで取り除けば問題はおきないのでしょう。
サイレントシャフトを排除することによって、オイル経路の途中を開放してしまうことにならないよう、サイレントシャフトのベアリングを90度傾けて挿入しなおし、オイルポンプのギアの軸になっている方のシャフトを切断することで、コストを掛けずに取り除くことは出来そうだ。
C83A用のオイルポンプのドリブンギアのシャフトMD098626を利用するのも良さそうですね。機会があれば試してみようと思います。

P.S. 元々ダメージがあったサイレントシャフトベアリングですが、どうもシャフトが曲がっていたようで、同じ箇所のベアリングが擦り切れて脱落し、メタルが全滅する不具合に見舞われました。(被害が広範囲で原因がハッキリ調べられませんでしたが、サイレントシャフトベアリングの脱落で、それ以外のメタルのオイル供給量が減って、潤滑不良に陥ったと推測しています。)
このような極端なダメージがある場合は、シャフトが曲がっている可能性も考慮した方が良いようです。